紺碧の海 金色の砂漠
(ま、まさか……ね。そんな……いくらなんでも)


侵入者は刃物を腰に仕舞う。

しかしそれは撤退を意味したものではなく……。懐に手を差し入れ、黒光りするモノを取り出したのだ。


「ちょ、ちょっとソレって反則!!」


羽根枕と大理石の灰皿で、どうやって拳銃の弾が防げるだろうか。舞はとりあえず前に突き出し重ねてみるが……効果はなさそうだ。


「な、なによ! 仮にも殺そうっていうんなら、名前くらい名乗りなさいよねっ! わたしを殺したってなんにも変わりはしないんだからっ」


せめて時間稼ぎになれば。助けが来るまでの……。

そう思ったとき、舞の胸にイヤな予感が走った。


「ちょっと待って! あんたってば、まさか外の警備兵を殺したの?」


さすがの舞も声が震えた。

何度かピンチには陥ってきたけれど、今度ばかりはヤバイかもしれない。なんといっても、ミシュアル国王は舞の近く……どころかこの国にはいないのだ。ヤイーシュもセルリアン島に置いてきた。しかも怪我人。

頼みの綱はレイ国王だが、賊がここまで入ってきて、しかも騒ぎになっていないということは……。


(……手引きした者がいるんだ。王宮のほうは誰も気づいてないかも)


冷たい汗が背中を流れた。

黒い光がピクリと動き、舞はとっさに灰皿で頭を覆い、しゃがみ込む!
 

舞の耳に――ガンッ! と何かが壊れる音が届き、続けて、パンッ! ともう少し軽めの空気を震わせる音が聞こえた。


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