紺碧の海 金色の砂漠
彼は舞を自分の背中に庇い、左手に持った拳銃をうずくまる黒ずくめの男に向けた。


「貴様は……いや、貴様は王家に背いた愚か者だ。恥を知れ――ダーウード!』


日本語が、いきなり流暢なアラビア語に替わった。

そして、彼の口から発せられた名前に舞は叫んだ。


「ダ、ダ、ダーウードって言った?」


舞もようやく暗がりに目が慣れる。黒ずくめの男が口元の布を下ろし、こちらを睨んでいた。

どうりで、鍵を持っているうえに、簡単に入ってこれたはずだ。

ヤッパリという思い、そして、まさかという思いが胸の中を駆け巡る。


「なんで? なんで、こんな……」

『下賎な女め! 私はアラビア語以外の質問に答えるつもりなどない!』

『えっと……どうして、わたしを殺すの?』

『決まっておろう。お前はすでに王の種を宿しておるやも知れぬ。殺さねば、次の王にはさらに穢れた血が混じる』


きっぱりと言い切られ、舞はそれ以上何も聞けない。


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