紺碧の海 金色の砂漠
激昂して怒鳴る舞に比べて、笹原はずいぶん落ち着いた声だ。


「その脅しは意味をなさないだろうな」

「ど、どうして?」

「この男はあなたを襲った時点で死刑が確定している。本国に戻りしだい銃殺。残っても、アズウォルドの王宮正殿で国賓を殺傷しようとしたんだ。この国の死刑は絞首刑。――生き残る道はない」


笹原の言葉にダーウードは頬を歪めた。どうやら、彼は答えたくないだけで、本当は日本語もわかっているらしい。


「とにかく、一刻も早く、アルに連絡しなきゃ……夜中で悪いけど、レイ国王を叩き起こして」


舞がそこまで言ったとき、噴水の間の向こう、廊下のほうから大勢の足音が聞こえてきた。

その直後、隣の部屋から拳銃を手に、レイ国王が飛び込んできたのだ。


「アーイシャ殿! お怪我はありませんか?」


背後には警備兵や警護官たちの姿が見え、一斉に国賓室になだれ込みそうになる、が……。

レイ国王が手で制し、その間に笹原がベッドサイドのアバヤをつかんで舞の頭からかぶせた。

当の舞には、とてもそんなことまで気を回す余裕がない。


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