紺碧の海 金色の砂漠
「申し訳ない。衛兵たちに大使館員は通すな、と伝えたのだが、ミシュアル国王の側近はノーチェックで通すようになっていた。妃殿下にお怪我がなくて何よりです」


何よりだと言うレイ国王の顔色が真っ青だった。

彼は舞の隣に立つ笹原に目を留め、


「ミスター・ササハラ、君の機転に感謝する」


短く礼を口にする。


「いえ。勝手な真似をして失礼致しました。身元を確認してから、明日、アーイシャ妃にご挨拶を、と言われていましたのに。何卒、お許しください」
 

この笹原は仕事でアメリカに入国していたが、そこからアズウォルドに予定外の緊急入国をしたのだという。


(別に途中で寄り道くらい……)


と舞は思ったが、そう簡単にはいかないそうだ。 


彼のように、王子の称号を持ちながら多国籍、という微妙な立場の人間はそう多くない。というか、反乱軍に国を追われて亡命するような人物と同じ扱いになり、滅多にいない。

公式にボディガードなどはつけられないが、彼の身に何かあれば国家的な問題に発展する。

行く先々で、笹原の行動は常に監視されていた。『安全に配慮して』といえば聞こえは良いが、まるで刑事事件の容疑者のようで居心地は悪いだろう。


< 191 / 243 >

この作品をシェア

pagetop