紺碧の海 金色の砂漠
そんな彼が、兄・ミシュアル国王からの書簡を受け取り、独断でアズウォルドに入国したのだという。

普通なら、大使館を通じ事前に入国先の許可を得る。でも彼は今回、そういった手順を一切無視した。

誰にも知らせず入国し、直接この王宮を訪ね、レイ国王にミシュアル国王の希望を伝えたらしい。


「書簡って何? アルはあなたに何を頼んだの?」
 

舞はアバヤをかぶったまま、笹原に向かって尋ねる。

しかし、言葉を返したのはレイ国王のほうだった。


「――アーイシャ殿。テレビをかけさせてもらうが……構わないだろうか?」

「は? テ、テレビですか? はあ、それは別に」


言葉の内容に気が抜けたが、レイ国王の声はまだ緊張を孕んでいた。


(なんで、こんなときにテレビ? でも、逆らうに逆らえないし……)
 

胸の中でぶつぶつ言いながら、舞は黙ってみていた。

すると、エアコン用と思っていたリモコンを彼が手に取ると、ワンタッチで壁がウィーンと上にスライド! そして、超大型のフラットスクリーンテレビが姿を見せる。


「す、すごい! こんなトコにテレビがあったなんて!?」

「何日も滞在して……君たちはテレビも見ていなかったのか? それはいったい、何を」


< 192 / 243 >

この作品をシェア

pagetop