紺碧の海 金色の砂漠
レイ国王は呆れた声を出すが……飛行艇の中で繰り返した同じやり取りを思い出したらしく、咳払いして途中で口を閉じた。

舞も気持ちは同じだ。

ちょっと時間があればエッチなことばかりで、ミシュアル国王は舞を片時も解放してくれなかった。綺麗で高価そうな骨董品ばかりの部屋だ、と思っていたが……この分なら、他にもいろいろあるのかも知れない。


(もうっ、アルってば! 心配は心配だけど……その辺のところ、一回はハッキリ言っとかないと!)


舞がミシュアル国王の顔を思い描いた瞬間、その大型画面に彼の顔が映ったのだ。

イケメン&美人アナウンサーがちょっと慌しいスタジオのセットに並んで座り、早口で原稿を読み上げている。

画面の上部には『a news flash』の文字があった。ニュース速報だとはわかったが、字幕なしにアズウォルドの英語でまくし立てられたら……舞は「ちょっと待って!」と言いたくなった。


『……まさか……そんな嘘だ……』


舞の隣に立つ笹原がレイ国王以上に真っ青になり、アラビア語で呟く。


「え? 何? なんて言ってるのよ。ねぇって……」


その直後、テレビから舞にもわかる日本語で女性アナウンサーが話し始めた。


――繰り返します。クアルン王国政府は、本日未明、ミシュアル・ビン・カイサル・アール・ハーリファ国王の乗られたヘリが墜落し、国王陛下の死亡が確認された、と発表しました。同国王は即位して二ヶ月と日も浅く、王太子の席も空白であったことから、政府はただちに王族を召集し、後継者の選出にあたると……。


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