紺碧の海 金色の砂漠
バカじゃないの? と言いかけて舞はやめた。
それがターヒルという男なのだ。彼ならきっと、殺されるとわかっていても、ミシュアル国王の命令とあれば戻るだろう。
シャムスは「ターヒルさまもすでに……」そう呟くと、再び泣き崩れた。そんな彼女の背後から、言い辛そうにヤイーシュが口を開き……。
「シャムス殿、気を確かに持って聞いて欲しい。実は昨日の朝、ターヒルが逮捕されたとの一報を受けた。私の判断で、あなたには伝えなかった」
舞の横でシャムスは息を止めた。
そんな彼女に代わって舞が尋ねる。
「ど、どうして? なんでそんな大事なこと黙ってるのよ!」
「彼女が知ってもできることは何もないからです。ならば……私がターヒルなら、妻に無用な心配は掛けたくない、と思うでしょう」
ヤイーシュの言葉は正しい。
アズウォルドに来てから、シャムスはずっと打ち沈んでいた。ターヒルが心配でならなかったのだろう。そんな彼女が“逮捕”なんて聞いたら、もっと悲しむに決まっている。
ターヒルだってそんなことを望んでいないのはよくわかる。
わかるけど……。
(それが男の理屈だって、なんでわかんないのよっ!)
それがターヒルという男なのだ。彼ならきっと、殺されるとわかっていても、ミシュアル国王の命令とあれば戻るだろう。
シャムスは「ターヒルさまもすでに……」そう呟くと、再び泣き崩れた。そんな彼女の背後から、言い辛そうにヤイーシュが口を開き……。
「シャムス殿、気を確かに持って聞いて欲しい。実は昨日の朝、ターヒルが逮捕されたとの一報を受けた。私の判断で、あなたには伝えなかった」
舞の横でシャムスは息を止めた。
そんな彼女に代わって舞が尋ねる。
「ど、どうして? なんでそんな大事なこと黙ってるのよ!」
「彼女が知ってもできることは何もないからです。ならば……私がターヒルなら、妻に無用な心配は掛けたくない、と思うでしょう」
ヤイーシュの言葉は正しい。
アズウォルドに来てから、シャムスはずっと打ち沈んでいた。ターヒルが心配でならなかったのだろう。そんな彼女が“逮捕”なんて聞いたら、もっと悲しむに決まっている。
ターヒルだってそんなことを望んでいないのはよくわかる。
わかるけど……。
(それが男の理屈だって、なんでわかんないのよっ!)