紺碧の海 金色の砂漠
二人が向かっているのは、東京から飛行機で五時間、日本のお隣にあるアズウォルド王国だった。


珊瑚礁の海に囲まれた十二個の島々からなる国。十八世紀に王国として独立して以来、アズル王室が統治している。日本とは基本的に仲がよくて、王族はもちろんのこと国民の半数以上に日本人に血が流れているという。

カトリック国だが独自の国教会を作っていて、異教徒……とくに日本人観光客のためにウェディング専用教会まである。二年前に結婚した現国王夫妻にちなんで、ビーチウェディングが大人気らしい。

日本のテレビ番組で特集していたくらいだ。


(青い瞳のプリンスなんて、ホント白馬にピッタリよね……ゼッタイに言えないけど)


アズウォルド王国大使館発行のパンフレットを見ながら舞はため息を吐く。

現在のレイ国王は三十二歳でミシュアル国王より四歳年上だ。

逞しいワイルド系のミシュアル国王に比べ、写真のレイ国王は頬や顎、肩のラインもすっきりしていて小柄に見える。

日本の皇族の方々を前にしたとき、舞は敬意が先に立ちひたすら緊張するだけだった。しかし隣国のプリンス・プリンセスとなると、どうしてもミーハー気分が前に出てしまう。

万に一つも「きゃーカッコいい!」なんて言おうものなら、夫婦喧嘩は必須だろう。


「浮かれるのは結構だが、機外に出るときはアバヤ着用を忘れるな」

「えーっ!? 南国でもアバヤなの? 暑さの質が違うんじゃない?」


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