紺碧の海 金色の砂漠
プリンセスと名のつく女性と親しく語らうなんて、普通ではありえない。

しかも、日本人特有のコンプレックスがあるのか、金髪にはなぜか萎縮してしまう。舞はクアルン王宮以上の緊張を感じていた。

そもそも目上といえば、親戚の叔父さん叔母さんであったり、先生と呼ばれる人たちであったり、精々その程度だろう。


舞が本気で落ち込み始めたとき、クリスティーナが口を開いた。


「そんなに堅くならないで。普通にお話しましょう? それとも、イスラムの教義で駄目なのかしら?」

「あ、いえ、そんなことは。あの……普通でも失礼じゃないですか?」


舞が恐る恐る尋ねると、


「気にしないで、私も結婚するまではただの図書館司書だったのよ」


クリスティーナはにっこりと微笑む。


「クリスティーナ様にそう言って頂けると助かります」

「ティナと呼んでください。私もマイって呼ぶわ。構わない? シーク・ミシュアルのお許しを頂かないと駄目なのかしら?」


クアルン国内ではないし、ふたりとも王妃なのだから敬称なしでも文句は言われないだろう。

舞はそう答えたが、ティナは少し悲しそうな目をした。


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