紺碧の海 金色の砂漠
笹原はそれを見て、


「妊娠初期にて空路での帰国は難しい。次期国王の命を危険に晒すつもりか――そう言えば、あの連中も黙るだろう」

「なるほど! さすがアーディル様」


妙に感心した風情のヤイーシュに、舞はイラッとする。

彼女が口を開こうとしたそのとき――。
 


「貴方がたは、失礼だとは思わないのですか!?」


男たちを前に叫んだのはティナだった。


「マイ……いえ、アーイシャ様が悲しみを堪えて、こうして気丈に振舞っていらっしゃいますのに。まだ、確かな情報が届いたわけでもないんですよ! それなのに、次期国王だなんて……」


涙ぐみながらも、怒りに満ちた声である。


だが、どうやらこの笹原は神経の太さもミシュアル国王と似たり寄ったりらしい。


「失礼ですが……正妃殿下より、王后陛下のほうがお心が乱れているご様子」

「だから、なんです?」

「これは国家の一大事なのです。恐れながら、王后陛下には別室にてご休憩いただいたほうが……」

「一大事なら尚のこと! 大事なお体であるアーイシャ様のお心に、負担をかけないように気づかうのが臣下の務めではありませんか? 貴方がたはご自分の名誉と立場ばかり気になさって、妃殿下を敬っていないではないのっ? 恥を知りなさい!」
 

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