紺碧の海 金色の砂漠
これにはさすがの笹原も口を噤んだ。

その態度に舞は少しビックリする。これがもしミシュアル国王なら、『それがどうした!』と言い返すだろう。でも、笹原は言わない。

きっと、彼の中にはクアルン王国の王子としての使命と、日本人としての思いが交錯しているのだろう。

次に口を開いたのはレイ国王だった。


「確かに。こういった席にアーイシャ殿を立ち会わせるのは、いささか早計ではないかな? 一日や二日、時間を空けて然るべきだ。ティナ、アーイシャ殿を奥の部屋に案内するよう」


レイ国王の言葉にティナはうなずき、鼻を啜りながら舞の肩にそっと手を置いた。


「……行きましょう、マイ」


ティナは優しい。

彼女ならきっと、ショックでしばらく何も考えたくない、と思うのだろう。でも、舞は違った。


「……ティナ……ありがとう。ごめんなさい……」


舞は肩に添えられたティナの手を外すと、笹原に向き直る。


「わたしの気持ちを言う前に、ひとつ聞いておきたいんだけど――。『クアルン王国の慣例に従う』って、いったいどういう意味?」


舞は打ちのめされた表情は一切見せず、胸を張り、顔を上げて彼に尋ねた。


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