紺碧の海 金色の砂漠
「それは……」

「人前で言えないようなこと?」


舞の言葉に棘があると思ったのだろう。笹原も真っ直ぐ舞をみつめて答える。


「そんなことはない。――アルの死が動かしがたい事実だと長老会議が認め、あなたの懐妊が判明した場合、私はあなたと結婚する」


その発言にはヤイーシュ以外の全員が息を飲んだ。



未亡人になった兄弟の妻を引き受けるというのは、王室に限ったことではない。クアルン王国内ではよくある話だった。

残された妻に子供がいない場合、妻は実家に帰されることが多い。

例外は戻る家がない場合。そのときは、夫の独身の兄弟が娶るか、新しい嫁ぎ先を探してやるのが慣例となっている。

だが、子供がいる場合は変わってくる。

クアルン王国において、男子は妻の子供ではなく、夫の一族の子供として扱われる。妻が婚家を離れる場合は、連れて出ることは叶わない。

女子はその限りではないが、立場が王女であれば……連れて出ることはまず不可能だろう。


今回の場合、結婚年数も浅いことから、子供がいなければ舞は日本に帰される可能性が高い。


一方、王位だが……。


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