紺碧の海 金色の砂漠

(18)勇気をほんの少し

(18)勇気をほんの少し



いい加減、本人を無視して話を進めようとする彼らに向かい、舞は、ダン! と足を踏み鳴らした。腰に手を置き、胸を張って男たちを見回す。


「お断りよ! 妊娠しててもしてなくても、男だろうが女だろうが、わたしはあなたと結婚なんてしません! わたしの夫はアルだけなんだからっ。お疲れ様でした。ニューヨークでも東京でも、あなたのいる場所に帰ってちょうだい!」
 

舞の返答にさすがの笹原もムッとしたらしい。


「大きな口を叩くが、私が駆けつけなければ、あなたはダーウードに殺されていたのではないか?」

「だったら何? アルが戻ってくるって言ったんだから、絶対に戻ってくる。わたしに何かあったら、ぜーんぶ、アルのせいなんだからねっ!」

「そのアルの頼みで私はここにいるんだぞ」


笹原はミシュアル国王と同じ琥珀色の瞳で舞を見下ろした。


声は似ている。瞳の色も同じだ。でも、ミシュアル国王とは明らかに違う。

ミシュアル国王にみつめられると、吸い込まれるように囚われ、無意識のうちに言いなりになってしまう。でも、笹原の瞳にその不思議な力はなかった。


(きっとそれが“恋”なんだろうな……)
 

舞はあらためて笹原を見上げ、迷いを振り切るように言う。


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