紺碧の海 金色の砂漠
舞は正式な婚姻を終え、日本の国籍を抜けて、一旦ラフマーン国籍となり、現在はクアルン国籍になっている。……はずだった。

だが、ラフマーンのスルタンとのやり取りはすべてミシュアル国王あってのこと。それにはサディーク王子の立ち位置も大きく関わっていた。


サディーク王子は……早く言ってしまえば、ラフマーンの王室で一番権力を持たない王子なのだ。王太子の次男、そして二十七歳という年齢。普通なら何らかの地位を与えられ、政治的権力を有してる年齢である。

しかし、彼は個人的な理由から一切の肩書きを持たず、国政にもなんら関わっていない。

しかも、このままいくと来年には王子の身分すら奪われる寸前であった。


そうなると、余計に舞の立場は微妙だ。

ミシュアル国王がいなくなれば、正妃としての資格なし、と判断されかねない状況で……。


「いいわよ。クアルン国籍を認めないっていうなら、もう一度日本に戻るから」


舞はそう返したが……。

笹原は大げさなほど、深いため息をついた。


「ことはそう簡単にはいかない。国際的には王妃の立場にあるあなたを、日本が受け入れるかどうかは微妙だ。思い出してくれ、母上の希望やアルの思いはさておき、日本側があなたとクアルン王国の王子との婚約を薦めた理由がなんだったか」


舞はハッとした。


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