紺碧の海 金色の砂漠
すると笹原は初めて声を荒げた。


「何を馬鹿なっ! この国を出て、ひとりでどこに行こうと言うんだ! 日本にも……」

「ちょっと、うるさいってば! わたしひとりくらいどうとでもなるんだから」

「コソコソ隠れ住むつもりか!? それこそ、アルはそんなことを……」

「笹原さんて非公式にこの国に来てるんだよね? クアルンの第二王子ってのは、自分で返上してるって聞いたけど」


舞の質問に笹原は怪訝そうな顔で答える。


「ああ、そうだが。それがいったい……」

「だったら、この場でわたしに命令できる人っていないはずよね?」


舞は国賓。レイ国王やティナとは対等な立場である。退去の要請はできるが、命令はできなかった。

ましてや、パスポート上はただの日本国民にすぎない笹原や、キャラハン名義で不法入国中のヤイーシュが、一国の王妃である舞に命令するなどとんでもないことだ。


黙り込む笹原を尻目に、舞は言葉を繋ぐ。


「レイ国王陛下。お許しいただけるなら、わたしはセルリアン島に戻り、アルが迎えに来るのを待ちたいと思います」


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