紺碧の海 金色の砂漠
~*~*~*~*~
「妃殿下、少し風が出てまいりました。ヴィラに戻られてはどうでしょう」
それはクロエの声だった。
ビーチパラソルの下、舞はデッキチェアに座り込んだままボンヤリと海を見ていた。
遠浅なのでかなりの位置まで歩いていける。ミシュアル国王と手を繋いで歩いたのが昨日のことのようだ。
彼は『二~三日、或いはもっと早く』舞のもとに戻ってくると約束した。それがもう五日。ひとりでできる遊びはほとんどやった。もう、ひとりには飽き飽きしている。
(なんで迎えにこないのよ……)
シャムスも舞についてセルリアン島に戻ってきていた。
だが、一度折れた心はなかなか回復しないようで、シャムスはベッドから起き上がれずにいる。
『家族のためには、ターヒルさまとの結婚を無効にしてもらい、戻るのが一番だとわかっています。でも、もし旦那さまのお子がお腹にいたら……。私は家族を捨てても、子供を守ります』
ムスリムの掟も、クアルンの常識も知らない舞とは違い、シャムスは王室に仕える家系の人間だ。
ターヒルが冤罪とはいえ反逆罪で裁かれたら、彼の一族は王宮を追われるだろう。シャムスも同様だ。そしてシャムスの一家は、肩身の狭い思いをすることになる。
でも、シャムスとターヒルの結婚が無効なら……。
もし妊娠していたら――それを願ってシャムスは頑張ろうとした。でも、その可能性はないと、昨日判明したのである。
「妃殿下、少し風が出てまいりました。ヴィラに戻られてはどうでしょう」
それはクロエの声だった。
ビーチパラソルの下、舞はデッキチェアに座り込んだままボンヤリと海を見ていた。
遠浅なのでかなりの位置まで歩いていける。ミシュアル国王と手を繋いで歩いたのが昨日のことのようだ。
彼は『二~三日、或いはもっと早く』舞のもとに戻ってくると約束した。それがもう五日。ひとりでできる遊びはほとんどやった。もう、ひとりには飽き飽きしている。
(なんで迎えにこないのよ……)
シャムスも舞についてセルリアン島に戻ってきていた。
だが、一度折れた心はなかなか回復しないようで、シャムスはベッドから起き上がれずにいる。
『家族のためには、ターヒルさまとの結婚を無効にしてもらい、戻るのが一番だとわかっています。でも、もし旦那さまのお子がお腹にいたら……。私は家族を捨てても、子供を守ります』
ムスリムの掟も、クアルンの常識も知らない舞とは違い、シャムスは王室に仕える家系の人間だ。
ターヒルが冤罪とはいえ反逆罪で裁かれたら、彼の一族は王宮を追われるだろう。シャムスも同様だ。そしてシャムスの一家は、肩身の狭い思いをすることになる。
でも、シャムスとターヒルの結婚が無効なら……。
もし妊娠していたら――それを願ってシャムスは頑張ろうとした。でも、その可能性はないと、昨日判明したのである。