紺碧の海 金色の砂漠
『申し訳ありません、アーイシャ様。私はこの先、何を支えに生きればよいのでしょう……』


舞の顔を見るたびに、そう言って泣き伏してしまう。

クアルンにも戻れない。かといって、アズウォルドにもいつまでもいられない。舞は日本に家族がいるが、自分はひとりぼっちになってしまった、と絶望的な顔をする。
 

『いや、わたしだって日本には帰れないし……』


なんて気弱なことを言うと、さらに落ち込むので、


『いざってときにはアズウォルドを出て行ったってことにしてもらって、どっかの島に日系人として住まわせてもらうから平気よ。シャムスは肌の色が濃いから、東南アジア系で通用するって。アルがターヒルを連れて、迎えにきてくれるまで頑張ろう!』


舞はせっせとシャムスを励ました。



そんなシャムスに舞は感謝している。

彼女が身も世もなく泣いてくれるから、舞は笑っていられるのだ。

もし、そうでなかったら……。

 
「あの……アーイシャ妃殿下」

「あ、うん。もう少しここにいる。スコールがきてもパラソルの下なら平気でしょ? 水着だから濡れてもかまわないし……。こーんなにのんびりできるのも、アルが帰ってくるまでだからね」


舞がそう答えると、クロエは黙って頭を下げ、ヴィラに戻っていった。


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