紺碧の海 金色の砂漠

(20)あなたの腕で眠らせて

(20)あなたの腕で眠らせて



舞はトーブ姿のミシュアル国王に向かって走り寄る。

次の瞬間――。


「馬鹿者! なんという格好で」

「アルの馬鹿っ! すぐに帰るって。二~三日って言ったくせにっ! もう五日よ。嘘つき!」


水着姿の舞を咎めようとしたミシュアル国王に向かって、舞は思い切り怒鳴った。精一杯抑え込んできた感情が、堰を切って噴き上げてくる。

立場も何もかも忘れ、舞は叫びながら彼の胸を叩き続けた。


「馬鹿、馬鹿、馬鹿ーっ!! アルの馬鹿っ。二度と信じない。だいっ嫌いなんだからっ」


暴れる舞をミシュアル国王は押さえ込むように抱きしめる。


「すまぬ。だが、私はお前に会いたかった」


そのたったひと言で、舞が懸命に作り上げた壁は一気に突き崩された。

堪えてきた涙が溢れ出し、もう止められない。


「アル……ひとりにしないで。どこにも行かないで。死んじゃヤダ……わたし。わたしは」

「不在中のことはレイから聞いた。よくぞ、私を信じて動かずにいてくれた。妃であるお前を誇りに思う」
 

熱い砂の匂いがした。

ミシュアル国王の匂いと、命の証である鼓動を聞きながら……。舞はやっと張りつめた心の糸を切り、意識を落とすことができたのである。


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