紺碧の海 金色の砂漠
舞は上目遣いに尋ねてみる。

なんといっても先代国王からの側近だ。その彼が舞の命を狙っていたと知れば、かなりショックだろう。


「ダーウードのアラブ純血主義は聞いていた。だが、父上に引退をすすめられたとき、率先して私の側近を希望したらしい。父上は、そんなダーウードを信じたのであろうな」



もともとクアルン王国は、クアルン人こそアラブの中で最上の民族、という純血主義だった。

だが、ハーリファ王家により、その考えは薄れていったという。同族内の婚姻を繰り返すより、他部族からの花嫁を迎えたほうが血が濁らない。優秀で逞しい男子が生まれやすいと考えられたからだ。

そんな純血主義者にとって、国王の正妃だけは……というのが最後の砦になっていた。

舞が本当にラフマーンの王女ならともかく。彼女が日本の一般人女性であることは誰もが知っている。ミシュアル国王が王太子になったとき、ダーウードは再三、先代国王に意見したという。


『どうか、婚約解消を。あるいは、先にクアルン人女性を第一夫人として娶るよう、ご命令を!』
 


ミシュアル国王の話を聞き、ショックなのは彼ではなく、先代国王なのかもしれない、と思い直した。

舞はついでにクアルンで起こったことを聞こう、と思い……。


「ねぇ、アル……」

「言わずともわかっておる」


そう言うと、ミシュアル国王は優しく舞のまぶたにキスをした。


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