紺碧の海 金色の砂漠
しかし、王族として油田の利権にあやかる長老会議のメンバーは、ミシュアル国王に別の不満を持っていた。


ミシュアル国王は油田利益の国民還元政策を打ち出していた。だが、頭の古い王族は目先の利権に群がり、自身の取り分が減ると反対しているのだ。

クアルンは国民の半数が二十歳以下という若い国。今は様々な規制をされているが、いずれインターネットも若い国民を中心に入り込んでくるだろう。

国際社会に通用する人間を育てる。教育が国家の未来を担う――そんなスローガンのもと、ミシュアル国王は新規改革に取り組んでいた。



(へぇ~。アルってエッチなだけじゃなくて、真面目に国王として頑張ってるんだ……)


などという不謹慎な感想を舞は抱きつつ……。


「リドワーンが私に二心を持っている。そんなことをダーウードに伝えたらしい。ハーリファ王室から日本の血を一掃するチャンスだ、と。私がこのハネムーン中に反日組織を一網打尽にする計画を立てていたのに便乗した、というべきか」


それも舞には初耳だった。


例の、デパート前で舞に特殊塗料入りの瓶を投げつけた男。あの連中が反日組織らしい。

連中が王宮にも入り込んでいる、という情報を受け、ミシュアル国王は今回のハネムーンを利用して掃討作戦に出たという。


「私が単独で帰国する事態を見越して、警備の厳重なアズウォルドでハネムーンを過ごすことにしたのだ。レイにも、お前を守ってくれるよう頼んだ」

「じゃあ、弟の笹原さんを呼んだのは? ダーウードを怪しんでいたから?」

「いや……。残念ながら、我が国の外務省職員のことは警戒していたが、側近のことは信頼していた。ダーウードを、というより、彼を薦めた父上を信頼していたからだが」


ミシュアル国王は悔しそうに言う。


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