紺碧の海 金色の砂漠

(5)トラブルの達人

(5)トラブルの達人



安請け合いするつもりはなかった。

舞にしても、あのミシュアル国王の考えを変えさせるなんて、簡単にはできないと判っている。でも、ティナは相当悩んでいるように見えた。

彼女の思い詰めた表情を見ていると、一応話してみます、と舞は答えたのだった。

それにじっくり考えてみれば、ソレとコレは別のような気がする。


(自分の花嫁を選ぶわけじゃないんだもん……さすがのアルも一緒にはしないんじゃないかなぁ)


舞が明るく言うと、「でも、エアポートではお声もかけて頂けなかったから」ティナは俯き、悲しそうに微笑む。

心の中で持ち上げたミシュアル国王の評価が、あっという間に底まで落ちた。


(ホント、唐変木でわからずやなんだからっ!)


思えばさっきの行為も身勝手すぎる!

レイ国王に視線を向けたというだけで、ヤキモチを妬いていきなり襲いかかってくるなんて……。

そりゃちょっとはドキドキしたけれど、でも到着早々あんな真似をする必要などなかったと思う。どうせなら夜になってからゆっくりと……。

いや、そういう問題ではなく。



彼にとっては正しいことをしているつもりなのかも知れない。

でも、その言動によって傷つく人間もいるのだ。宗教が違うから、国王だから、で許されるのは何かがおかしい。


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