紺碧の海 金色の砂漠
なんと彼は第三夫人に迎える予定だった十六歳の少女と、本気で愛し合っていたらしい。

彼女は王子の宮殿に勤める女官見習いだった。王子は彼女の愛を得るため、多額の慰謝料を払って第一、第二夫人と離婚したのだ。彼女の両親も感激して、王子の求婚を受け入れた。

しかし、離婚理由に不妊を挙げられた夫人たちが激怒。当時のミシュアル王太子に直訴した。


「そんなこと……って言ったら悪いけど。それで、わたしってば殺されかけたわけ?」


人の恋路を邪魔したミシュアル国王のせいで命を狙われたのかと思うと、舞は力が抜けてくる。


「だから、そうではない! リドワーンはリドワーンで十六歳の女官見習いを妻にするために奔走し、王室の純血主義復活を願うダーウードたちの計画と重なっただけなのだ。それを意図的に重ねたのが長老会議の面々だが……」



当初、舞を狙うだけのダーウードたちだったが、彼らの行動はしだいにエスカレートした。

前国王命令、を出せば思うままに動くリドワーン王子。ミシュアル国王の力を削ぐために、ターヒルに逮捕状を出したまではよかった。それを餌に国王を舞から引き離せる。

ところが、アメリカ人の母を持つヤイーシュがシークを名乗ることに、不満を持つ者がいたのだ。そして、命を狙ってしまった。

やり過ぎたせいでヤイーシュの不審を買い、彼を逃がしてしまう。


そして――ヘリ墜落、ミシュアル国王死亡の一報。


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