紺碧の海 金色の砂漠
ダーウードをはじめ、純血主義の権化ともいうべき数人は大喜びしたらしい。

でも、ほとんどの人間が青ざめた。なぜなら、国王暗殺など、誰も計画していなかったことで……。



「反日組織はあの時点で壊滅していた。別の組織が動き出したなら、狙いはお前ではない、と思ったのだ。だが、万一を考えヤイーシュを残した」

「じゃ、笹原さんは? それに“王太子の剣”を預けたのはなんで?」

「保険だ。私は国王として国家の未来を考える義務がある。後継者なきまま死ぬわけにはいかない。リドワーンが敵なら、シドは取り込まれている可能性が高い。国王としてアーディルに一任する証に、“王太子の剣”を委ねた」
 

ヘリはミシュアル国王自身が操縦して、ルシーア地方の森に不時着させたらしい。そこで待たせていた部下と合流して、ヘリを炎上させた。

そのまま宮殿に乗り込み、『国王死亡』の報に慌てまくっていた前国王の側近たちを一網打尽にして、長老会議で反ミシュアル国王派をあぶり出した。

長老会議の連中は犯罪に加担した証拠がないので逮捕はできないらしいが……。


「リドワーンには第三夫人を娶る許可を出した。今は私に忠誠を誓い、長老会議の連中を尋問している。ターヒルは逮捕状そのものが無効と判明し、すぐに解放されたのだ。ライラたちが無事とわかり、シドも役目に戻った」


言うのは簡単だけれど、それを水面下で実行したのはさぞかし大変だったと思う。

でも、舞はこれだけは言わずにいられなかった。


「わたしが殺されそうになったとき、アルが助けてくれるって思ったのに」

「……何より恐ろしかったのが、ミサイルで国王専用機を狙われたら、ということだった。お前を同行しなかった理由だ。――許してくれ」


後ろからギュッと抱きしめられ、舞の中に安堵感が広がる。


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