紺碧の海 金色の砂漠

(22)おとぎ話をもう一度

(22)おとぎ話をもう一度



『アーディル、面倒をかけたな。礼を言うぞ』


ミシュアル国王は、床に両ひざをついて頭を下げる弟に声をかけた。



そこは入国二日目に晩餐会が催された王宮、騎士の間だ。

二ヶ月くらい前に思えるが、ほんの二週間前のこと。舞にとってはイブニングドレスで出席できた、思い出深い晩餐会だった。


晩餐会のときと同じく、レイ国王とミシュアル国王の席が並んで設けられている。その後ろにティナと舞の席も用意されていた。

ティナは本来、夫と並んで座るのだが、クアルンの法律で舞は夫と同列には扱われない。そのため、ティナが合わせてくれたのである。


本日正午、ふたりの帰国に合わせて式典が行われた。

両国国歌が王宮楽団の演奏で流れ、王宮正殿前に掲げられたクアルンの国旗が下ろされる。


舞がビックリしたのは何ごともなかったかのような、レイ国王のお言葉――


「――小さなアクシデントを乗り越え、両国の友好関係が末永く続くことを。そして、クアルン国王夫妻が、私とクリスティーナのように、いつまでも幸福であることを祈りたいと思います」
 

レイ国王の浮気疑惑からティナの家出騒動。巡洋艦が出動して……ふたりの国王がレスキュー並の活躍までした。あとはのんびりハネムーンと思った矢先、ミシュアル国王の緊急帰国。すると、ひとり残った舞のヴィラが襲われた。レイ国王とヤイーシュの機転で王宮正殿に移っていた舞だったが……。今度は側近ダーウードに命を狙われ、ラストはミシュアル国王のヘリ墜落死報道――。


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