紺碧の海 金色の砂漠
そのとき、夕食用のテーブルをセッティングしていたメイドが噴水近くにいた舞に歩み寄り、声をかけた。

その顔は見覚えがある。セラドン宮殿でカフェオレを運んできてくれた若い女性だった。


「アーイシャ様! 私の父は日本人で、私も中学まで日本の学校……聖麗女学院に通っておりました。ご存じないと思われますが、アーイシャ様の一年後輩でミナホ・カリノと申します」

「本当に? 全然覚えてないわ。ごめんなさいね」

「いえ、とんでもございません。ただ、妃殿下に直接お祝いを申し上げたくて……ご結婚おめでとうございます」


純真そうな十代の少女が胸の前で両手を組み、ウルウルした眼差しで舞を見上げている。

何となくこそばゆい感じで舞が照れていると、


「それと今朝のニュースで知りました。ラシード王子殿下のお妃様がご懐妊とか……おめでとうございます!」

「え……っと、あの」

「次はアーイシャ様ですね。アーイシャ様は日本の誇りです。ぜひ頑張ってください。おめでたいご報告を心待ちにしております!」


ラシード王子の妃とはライラのことだろう。


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