紺碧の海 金色の砂漠
驚く舞にミシュアル国王は当然のように言った。


「南国だろうが北極だろうが、我がクアルンの王妃がアバヤなしで人前に出るものではない。いずれ変えて行くにしても、今は駄目だ。私たちの間に男子が生まれ、お前が妃としての役目を果たしたあとになる」


何気なしに言った言葉なのだろうが、舞にすればカチンとくる。


「じゃあ、男の子を産めなかったら、わたしは役目を果たしたことにならないわけ?」

「私の子を産むのが不満か?」

「そんなこと言ってないでしょっ!」

「では問題ない。近い将来お前は母親となり、子供たちの中には後継者となる男子がいるだろう」


ミシュアル国王の言う理屈は正しい。舞は夫を愛しているし、子供だってたくさん欲しい。彼が望むなら、男の子だって生んであげたいと思う。

問題は言い方なのだ。

舞は不愉快そうな顔をして黙り込み、座席に深く腰かけた。

すると、ミシュアル国王も何事か察したのだろう。アームレストの上に置かれた舞の手に自分の手を重ね、ギュッと握り締めた。


「また私は言い方を誤ったらしいな。……息子は欲しいが、娘であっても変わらず愛するだろう。もし仮に、私たちにアッラーの恵みがなくとも、妻はお前だけだ。誓いは生涯変わらぬ。安心いたせ」


舞の心からアズルブルーの海が消え去り、琥珀色一色に輝いた。


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