紺碧の海 金色の砂漠
ソーヤ王子の母親は日本人で、なんとアズウォルド国民からメチャクチャ嫌われているのだという。それをわかっていてソーヤ王子もいまだに独身。

彼はレイ国王の結婚当初、国王夫妻に後継者ができるまで結婚しない、と宣言したとか。ソーヤ王子に悪気はなく、まさか二年経っても授からないとは思わなかったのだろう――とミシュアル国王は説明してくれた。

そして、不妊を一番気にしているのはティナで、ちょっとしたことでも過敏に反応するのだという。

レイ国王をはじめ王宮の皆がティナに気遣い、結果、夫婦の間がギクシャクしてしまい……。


(うーーーん)


誰が悪いとも言えず、舞は胸の中で唸った。

ふたりとも真面目そうで良いパパとママになりそうなのに……どうして神様って公平じゃないんだろう。

成り行きで結婚したラシード王子たちには結婚一ヶ月で子供が授かるし。ラシード王子はまだ二十二歳の大学生だ。

ライラを愛する根性だけは認めるが、どんな父親になるのか想像もできない。


「舞、クリスティーナを気遣うのはいいが、必要以上に考えぬことだ。私たちにもすぐに授かる。今宵も精一杯努力しようではないか」


舞の沈黙をどう捉えたのか、彼はもうスイッチが入ってしまったらしい。

背後からゆっくりと抱き締め、舞の首筋に唇を這わせる。


「アラビアコーヒーの匂いがする……」

「いい加減好きになってはくれぬか。それとも、この状態で私に歯を磨いて来いと言うのか?」


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