紺碧の海 金色の砂漠

(7)恋は蜜の味

(7)恋は蜜の味



わずか二十分の早業とは違い、最上級のスプリング・マットレスを一時間たっぷりと堪能して、舞は全裸のまま横たわっていた。

肌に触れるシーツもサラサラで心地好い。寝返りを打つと少しだけひんやりしていて汗が出ないのだ。



「舞、それほど気に入ったなら、ダリャの王宮にも同じベッドと寝具一式を揃えよう」


ミシュアル国王は腰に白い布を巻いただけの姿で、冷蔵庫からミネラルウォーターを二本取り出した。一本を開けて飲みながら、もう一本を舞に渡してくれる。

本来、これは傍に控えた女官か妃の仕事だという。

国王自ら飲み物を取りに行き、しかも妃に給仕するなどありえない事態だ。はじめは文句を口にしていたミシュアル国王だが、「もうダメ……動けない」舞がそう言って甘えると、いそいそと飲み物を取ってきてくれるようになった。

とはいえ、


「これでは、私もレイと変わらんな」


などとブツブツ言っている。


舞は上掛けで前を隠しながら、ゆっくりと体を起こしミネラルウォーターを受け取った。

瓶は開封してあり、“クアルン王国検査済”とアラビア語で印刷されたシールがベタリと貼ってある。それを剥がしながら、


「え? そんなことできるの? すっごく高いんじゃ……」


そこまで言い掛けて、舞はハッとした。


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