紺碧の海 金色の砂漠
案の定、ミシュアル国王はこめかみを引き攣らせながら瓶をサイドテーブルに置き、舞の前に座り込んだ。


「それはどういう意味だ? 確かに今のアズウォルド王国は豊かだが、国力は我がクアルンにはまだまだ及ばぬ! 私はこれを凌ぐベッドを宮殿に入れてみせるぞ!」


(そ、そんなベッドひとつで張り合わなくても……)


拳を握り締め宣言するミシュアル国王を、舞は呆気に取られて見つめていた。

すると、彼女が飲もうとしたミネラルウォーターの瓶を、ミシュアル国王はいきなり取り上げたのだ。


「ちょ……アルってば。わかってるよ。アルのほうが凄いって。ただ……わたしの為に無駄遣いしなくてもいいのにって思っただけで」

「妻の願いを叶えるのは、夫の義務であり喜びだ」

「じゃあ、喉が渇いたから水が飲みたいって願いを邪魔しないで」


舞が少し口を尖らしてそう言うと、ミシュアル国王はニヤリと笑った。


(な、なに? わたし、なんか変なこと言った?)


「よかろう。お前の願いを叶えてやろう」


言うなり、ミシュアル国王は舞から取り上げたミネラルウォーターを口に含んだ。そのまま舞を抱き寄せ、口移しで飲ませようとする。

口づけられた拍子に舞は上掛けから手を離してしまった。冷たいはずの水は少し生温くなっていて、喉越しは微妙かもしれない。

だが、端からこぼれ落ちた液体が顎を伝い、舞の露わになった胸に滴り落ち……。


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