紺碧の海 金色の砂漠
重ねた手の上にさらに舞が手を置こうとしたとき、ミシュアル国王が手首を掴んだ。そのまま軽く引き寄せ、くちづける。何度キスしても、そのたびに胸がドキドキする。


「ア、アル……待って、あの」

「何を待つのだ? 着陸まで、私に逆らうことは許さぬ。王命だ」


唇を重ねるキスから、もっと深く舌先を絡めるキスへと進みかけたそのとき――。



『陛下っ! なんたることです、嘆かわしい。クアルン国王たるものが人目も憚らず接吻など』

『うるさいぞ、ダーウード。ここは国外、クアルンの法により裁かれることはない』

『しかし、国王ともあろうものが』

『判った。下がれ』


七十歳近いと思われる側近、ダーウードは渋々下がった。

彼は前国王の側近を務めていた。前国王は『若い側近らが手本とするように』との心遣いで、ダーウードをミシュアル国王の側近につけたのだ。

父親の心遣いを無下にもできず、ミシュアル国王は『ありがたく』受け入れたのである。

日本滞在中に途中から加わったダーウード・ビン・アッドゥーヒーはとにかく仕来りにうるさい。


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