紺碧の海 金色の砂漠
ティナが喜んでくれるなら、それ以上のことはない。だが、問題はこの先だった。


「ねえ、レイ、もうすぐ日付けが変わるわ。そろそろ休んだほうがいいんじゃないかしら?」


彼はスッとティナから離れた。デスクの書類を手に取りつつ、


「ああ、悪い。どうしても目を通しておかなければならない書類なんだ。会議は明日もあるからね」


できる限り平静を装った。


「レイ……そう言って何日寝室に戻っていないか、わかってる?」

「わかっているよ。だが今は、本当に忙しいんだ」


レイは再びティナに髪に触れ、


「頼むよ、ティナ。私を困らせないでくれ。新婚夫婦に当てられているのは私も同じなんだ」


彼女のヘーゼルの瞳を覗き込み、軽くキスした。

いつもなら、これで引き下がるはずだった。

しかし……。


「今夜だけ、お願い、今夜だけ……私と一緒に休んで欲しいの。もちろん、その……眠るだけじゃなくて」


ティナは少し頬を赤らめつつ、身振り手振りで気持ちを伝えようとする。

無論、それは気付かないほどレイは鈍い男ではない。


「一番……赤ちゃんができやすい日なの。だから……夫婦なんだもの、協力してくれるでしょう?」


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