紺碧の海 金色の砂漠

（9）罪なハネムーン

（9）罪なハネムーン



王宮関係は古い建物の多いクアルンに比べ、アズウォルドは新しく感じる。

それもそのはず、テロ以前のこの国は貧困に喘ぎ、王宮とはいえ雨漏りのするような場所もあったという。

レイ国王が摂政となって実権を握り、この国は急成長を果たした。テロで半壊した王宮を全て撤去し、完全西洋風の王宮正殿と南国の名残がある王宮とに建て替えたのだ。


そして今、舞が立っている場所は――王宮正殿の一階にある“騎士の間”。

クアルン王国国王夫妻を歓迎して催された、晩餐会の会場であった。



昼過ぎ、いきなりミシュアル国王は公務から戻って来て、


「舞、今日の晩餐会にお前も出席することになった。急なことでドレスを作る時間がない。すまぬがこれを着て出てくれ」


ミシュアル国王の側近が差し出したのは、舞がクアルンで初めて着たドレス――ダイヤモンドが散りばめられたシャンパンゴールドのイブニングドレスであった。

舞にすれば、いつの間に？　どうして持ってきたんだろう？　と不思議でならない。

だがそれは、両親にドレス姿を見せたいのではないか、というミシュアル国王の心遣いだったらしい。結局、日本では着る機会がなかったのだが。


「えええーっ！？　どうして？　何で？　こんなドレスを着て、晩餐会に出ていいのっ？」


舞はパニックである。

クアルン流の午餐会や晩餐会、もっと簡単に食事会とか茶話会なんかはだいぶ飲み込めてきた。だが、イブニングドレスを着た西洋風の晩餐会など……。


（っていうか、何をどうしたらいいのよーーーっ！）


< 45 / 243 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop