紺碧の海 金色の砂漠
天井一面に騎士の絵が描かれていた。騎馬隊の一団や、その向こうには剣を抜いて戦う、合戦シーンもある。重そうなシャンデリアが六基も吊られ、大広間にセッティングされたテーブルには、ほとんどの招待客が着席していた。

舞はそんな会場の様子を、衝立の隙間からコッソリ眺めてため息をつく。


(日本では出られなかったもんねぇ……こんなの初めて)


だが、レイ国王とミシュアル国王が並んで入場した瞬間、全員が一斉に立ち上がる。舞も慌てて姿勢を正し、ティナと一緒に彼らの後ろを静々と歩くのだった。


会場を見渡し、ゴクッと息を飲む。事前に聞いてはいたが、こうして目の当たりにすると壮観だ。晩餐会のフロアには着飾った招待客が百二十名ほど……その全てが女性であった。

思い思いのドレスの波が“騎士の間”を席巻する。

後宮の集まりも華やかではあるが、ここはそれ以上に豪華絢爛という形容がピッタリに思えた。


「クアルン国王夫妻を歓迎するのに、妃殿下が出席できないシステムはおかしい。可能な方向でクアルン大使と検討するように」


レイ国王はそんな指示を出していた。

だが結局、一行が到着するまで結論は出なかったらしい。


クアルンのルールで言えば、家族で王宮を訪ねた場合、妻と娘を相手の後宮に預けることになっている。信頼の証ともいえるが、それが成り立つのは相手の後宮も男子禁制であるがゆえ、だ。

柔軟だと言われるレイ国王は、それならば、と晩餐会を男子禁制にした。

今夜このフロアの中に入れるのは、両国王以外は全員が女性! 招待客から配膳スタッフ、王宮楽団の奏者、警備にも女性警察官を配備するという完璧ぶりだ。


順番に国歌の演奏が終わり、両国国王が着席すると他の全員も椅子に腰を下ろす。

こういった晩餐会の場合、国王が中央に並んで座り、相手国の王妃がその隣に座る。というのが慣例だ。

しかし今回は違った。上座が設けられ、そこに国王が並んで着席。その一段下の中央に王妃たちの席を設け、あとは通常の席次順となっている。

舞がレイ国王の隣にならないよう、配慮したテーブル配置だった。


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