紺碧の海 金色の砂漠
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『昨日は妃が世話になったと聞いた。非常に喜んでいた。クリスティーナ王妃に礼を言う』 


ミシュアルはとりあえず礼儀正しく声を掛けた。

しばし返事を待つが、レイは一段下の席に舞と並んで座る、アズル・ブルーのイブニングドレスに身を包んだティナを凝視している。

それに気付いたミシュアルは、わざとらしく咳払いしつつ……。


『昼間の会議もまともに聞いていなかったな。君が女に呆けるとは……珍しいことだ』


ハッとして横を見るレイに向かって、してやったりの笑みを浮かべる。

レイは水の入ったグラスを取り一口飲みながら、彼らしくない不機嫌な声で答えた。


『疲れが溜っている。その上、寝不足なんだ』

『結構なことだ。しかし、言い訳は君らしくない』


夜の寝不足といえば何を指すか……言わずもがなであろう。ミシュアルは自分の基準で答えを返す。


『シーク・ミシュアル、新婚の君と一緒にするんじゃない』

『妻を持つ男が夜に行うべきことはひとつだ。結婚年数など関係ない。夫の義務だ』 


その何気ない言葉に、レイの表情は凍りつく。

しかし、心の機微を察するのは、ミシュアルにとって苦手なことのひとつだったのである。


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