紺碧の海 金色の砂漠
(10)孤独なふたり
(10)孤独なふたり
晩餐会はそのまま舞踏会になるのが通常だが、まさか、国王夫妻だけ踊り続ける訳にもいかない。その為、食事が終わると会はお開きとなった。
その代わり、国王たちは続きの間で、締め出しを食らった男性招待客との謁見が控えているという。
舞とティナは“貴婦人の間”に案内され、王族女性との歓談が予定されていた。
「クアルン王国の王妃様がわたくしと同じ日本人だなんて、光栄でございますわ」
オーホッホッホ! と高笑いをしているのが前国王の生母、レディ・チカコだと紹介された。
彼女は綺麗な日本語を話し……というより、日本人なのだから当然かもしれない。
「王弟殿下のお妃様がご懐妊とか、おめでとうございます。やはり後継者を産むことは、王家に嫁いだ者の義務ですものね。お若い妃殿下なら、ご懐妊もすぐですわ!」
ティナに向けたあからさまな嫌味に、舞はカチンときた。
おそらく、横で見ていてわかるくらいムッとした顔をしたのだろう。ティナは慌てたような口ぶりで、
「お祝いは結構ですが、プライベートに関するお話はお止めください」
「あら、おめでたいお話ですもの。クリスティーナ様、あなたにご懐妊の兆しがないからといって、あまり周囲に気を遣わせるのはどうかしら?」
チカコはティナの言葉など鼻で笑う様子だ。
そのとき、
「王后陛下に失礼ですよ。言葉を慎みなさい」
厳しい口調で言ったのはレイ国王の叔母にあたるルシール王女であった。髪と瞳の色はブラウンだが、全体的なイメージは西洋風の女性だ。
晩餐会はそのまま舞踏会になるのが通常だが、まさか、国王夫妻だけ踊り続ける訳にもいかない。その為、食事が終わると会はお開きとなった。
その代わり、国王たちは続きの間で、締め出しを食らった男性招待客との謁見が控えているという。
舞とティナは“貴婦人の間”に案内され、王族女性との歓談が予定されていた。
「クアルン王国の王妃様がわたくしと同じ日本人だなんて、光栄でございますわ」
オーホッホッホ! と高笑いをしているのが前国王の生母、レディ・チカコだと紹介された。
彼女は綺麗な日本語を話し……というより、日本人なのだから当然かもしれない。
「王弟殿下のお妃様がご懐妊とか、おめでとうございます。やはり後継者を産むことは、王家に嫁いだ者の義務ですものね。お若い妃殿下なら、ご懐妊もすぐですわ!」
ティナに向けたあからさまな嫌味に、舞はカチンときた。
おそらく、横で見ていてわかるくらいムッとした顔をしたのだろう。ティナは慌てたような口ぶりで、
「お祝いは結構ですが、プライベートに関するお話はお止めください」
「あら、おめでたいお話ですもの。クリスティーナ様、あなたにご懐妊の兆しがないからといって、あまり周囲に気を遣わせるのはどうかしら?」
チカコはティナの言葉など鼻で笑う様子だ。
そのとき、
「王后陛下に失礼ですよ。言葉を慎みなさい」
厳しい口調で言ったのはレイ国王の叔母にあたるルシール王女であった。髪と瞳の色はブラウンだが、全体的なイメージは西洋風の女性だ。