紺碧の海 金色の砂漠
(12)危険なゲーム
(12)危険なゲーム
「――では、車が一台消えているんだな」
ミシュアルはレイと王室専用船に乗り、アジュール島に向かっていた。
全長二十五メートル、全幅十メートル、二百トンにも満たない船だ。しかし、国内の島々を巡る分には充分だという。
レイが携帯電話で話しているのは、どうやら王妃の護衛官らしい。
(護衛官を煙に巻いて出奔とは……全く、妃にどういう教育をしているのだ)
それもこれも、レイがクリスティーナに甘いからだ、と心の中で舌打ちする。いくらアジュール島が安全で、しかも舞の為に不慣れな女性護衛官を多用しているからと言っても……。
「いや――向かった先はわかっている。君たちはそのままアーイシャ妃の警護に回って……何っ!? ティナはアーイシャ妃を伴って宮殿を出ただと!」
その台詞に、ミシュアルは口に含んだ“シャルバート”を吹き出した。彼のために作られた、ナツメヤシの実や乾したブドウの入った甘いドリンクだ。
ミシュアルはわなわなと手を震わせ、レイに向かって怒鳴る。
「伴って、とはどういう意味だ! お前の妃がアーイシャを連れ出したのか?」
「ミシュアル、少し黙っていてくれ」
レイは電話口を押さえ、ミシュアルに命令した。
再び電話の相手と会話を始めるが、
「黙れとは失礼であろう! 我が正妃に何かあれば、お前の妃と言えどもただでは済まさぬぞ!」
「――では、車が一台消えているんだな」
ミシュアルはレイと王室専用船に乗り、アジュール島に向かっていた。
全長二十五メートル、全幅十メートル、二百トンにも満たない船だ。しかし、国内の島々を巡る分には充分だという。
レイが携帯電話で話しているのは、どうやら王妃の護衛官らしい。
(護衛官を煙に巻いて出奔とは……全く、妃にどういう教育をしているのだ)
それもこれも、レイがクリスティーナに甘いからだ、と心の中で舌打ちする。いくらアジュール島が安全で、しかも舞の為に不慣れな女性護衛官を多用しているからと言っても……。
「いや――向かった先はわかっている。君たちはそのままアーイシャ妃の警護に回って……何っ!? ティナはアーイシャ妃を伴って宮殿を出ただと!」
その台詞に、ミシュアルは口に含んだ“シャルバート”を吹き出した。彼のために作られた、ナツメヤシの実や乾したブドウの入った甘いドリンクだ。
ミシュアルはわなわなと手を震わせ、レイに向かって怒鳴る。
「伴って、とはどういう意味だ! お前の妃がアーイシャを連れ出したのか?」
「ミシュアル、少し黙っていてくれ」
レイは電話口を押さえ、ミシュアルに命令した。
再び電話の相手と会話を始めるが、
「黙れとは失礼であろう! 我が正妃に何かあれば、お前の妃と言えどもただでは済まさぬぞ!」