紺碧の海 金色の砂漠
懸念される国際問題は山のようにある。火種は合衆国にも日本にも、そしてイスラム諸国にもあった。

それが、いきなりハリウッド女優の話に飛び……ミシュアルにはサッパリわからない。


「私は結婚前、ことさら派手な女性関係を演出していた――」


それにはミシュアルも心当たりがある。やれパーティだ、バカンスだと言い、その都度レイは様々な女性を同行していた。世界中のマスコミに“プレイボーイ・プリンス”と書き立てさせたと言ってもいい。

真偽の程はミシュアルも知らない。重要なのは、彼が国王として信頼に足る人物か否か、ということだけだ。

そして、ミシュアルはレイを信用していた。

 
「その時にエスコートした女性の独りが、このミズ・ローラ・ウィリアムズだ」


レイは雑誌を一冊、ミシュアルに差し出した。

表紙に金髪碧眼の女性が下着同然の姿で載っている。肢体をくねらせ、男を誘惑する売春婦そのものだ。このような雑誌をクアルンに持ち込もうものなら、即刻逮捕されるだろう。

ただ、ミシュアルとて男である。

度を越したダイエットで針金のようになった裸体に比べれば、ローラの健康的で豊かなバストとヒップは観賞用には悪くない。


「そして彼女は四ヶ月前に、この国を訪れている」

「――言い訳も説明も要らん。君の子供なら認めて養育費を払え。この女が偽りを口にしたなら、制裁を加えれば済むことだ」


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