紺碧の海 金色の砂漠
「ごもっとも。だが、彼女は個人的事情でノーコメントを通すそうだ。私は否定すると言ったが、報道室長は表面的事実のみ書かれている以上、こちらから騒ぐのは不利になると言う」


数年前の一時期、レイと交際があったということ。ローラが妊娠しており、父親の名前を決して明かそうとしないこと。そして、子供の父親と関係があったと思われる時期、アズウォルドを訪れていることが報道されていた。

厳密に言えば、『父親=レイ』と思わせる報道は規制することが可能だ。

しかし、規制した、という事実は残る。アズウォルドのような検閲や報道規制が少ない国では、余計に噂を煽ることにもなり兼ねない。


「身に覚えのないことなら放っておけ」

「問題は……ティナがそう思ってくれるかどうかだな」

「一国の王たる者が! 情けない言葉だ」

「では、シーク・ミシュアル、君ならどうする? アーイシャ殿は無条件で君を信じてくれると思うかい?」


ミシュアルは三秒ほど考え、「当然だ」と答える。

レイは苦笑いを浮かべつつ、


「そう言い切れる、君が羨ましい」


深いため息をついたのだった。


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