紺碧の海 金色の砂漠
ティナは、ローラの子供の父親はレイ国王に違いない、という。


ちょうどその頃から、夜の生活が遠のきはじめ……とうとう二ヵ月くらい前から、ティナの誘いに全く応じてくれなくなったと告白した。


(二ヶ月も、なんて最っ低! そもそも、ヤルことヤラなきゃ子供なんて出来っこないじゃない!)


さすがの舞も、ストレートに言ったらティナを傷つけると思い……。


「いくら国王様だって、浮気なんて酷いわ! しっかりお灸を据えてやらないと」

「浮気ではないわ。レイは浮気をするような人じゃないの。本気なのよ。だから、子供を作ったんだわ。だから、私のことも……」


そのまま、打ちひしがれたようにポロポロ泣き始める。


もうすぐレイ国王がここに来る。でも今は、彼と顔を合わせたくない。酷いことを言って、これ以上嫌われるのはイヤだから。誰とも顔を合わさなくて済む場所がある。レイも知っている場所だから、そこで頭を冷やして、冷静になって彼と向き合いたい――。



「ティナ、この道でいいのよね?」

「え? ええ、そう。レイが個人的に所有しているコテージがあって……きゃ!」


不意に背後から大きな音と揺れを感じた。

舞は慌てて車のブレーキを踏み、急停止する。

舞は地震の多い東京育ちだ。多少の揺れで大騒ぎはしないが、彼女が感じたのは地震の揺れではないような……。
 
 

――この時、コテージに繋がる一本道が崖崩れにより寸断されたことなど、わかるはずもない舞だった。


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