紺碧の海 金色の砂漠
コテージに到着したのが夕刻、辺りはもう真っ暗だ。

舞は思わず不安になる。


「海の近くだけど、満潮で高波が来るってことは……」


すると、ここは入り江になっており、小型のクルーザーがどうにか通り抜けられる程度の水路しか外と繋がっていないという。

どんな高波も、グルリと囲んだ断崖が自然の防波堤となり、入り江にはさざ波程度の影響しかない。ましてや、このコテージが何かの被害を受けたなど、ティナは聞いたこともない、と。
 

ところがその時、派手に窓ガラスが割れる音が聞こえた!


「きゃ!」


ティナは両耳を押さえ、屈むような仕草をする。

それは、さっき舞がシャワーを借りた部屋だった。彼女はティナを気遣いながらも、ひとりで部屋に飛び込む。

すると、コテージのすぐ外にあった大木の枝が折れ、窓に突き刺さっているではないか。部屋の半分に割れたガラスが飛び散り、ゴウゴウと音を立て雨風が吹き込んで来る。

とても女手で収拾できそうな事態ではない。舞は手にした携帯電話を見つめ、アンテナが立っていないことを確認して、呆然とした。


そこに、逼迫した声でティナが叫んだのだ。


「大変だわ、マイ! 電話が繋がらないのよ。……どうしたらいいの?」

 

(……なんか、ちょっとヤバイかも……)
 

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