紺碧の海 金色の砂漠
アジュール島の北側にそのコテージはあった。

コテージまでは深い森を抜ける一本道で、崖に挟まれた箇所もある。森の入り口には監視棟があり、島の警察官が常駐していた。

ここ数年、コテージを使用するのは国王夫妻のみ。彼らが滞在中は、衛兵も警戒にあたることになっている。

道中はもちろん、森の中にも随所にセンサーが取り付けられ、管理体制は万全のはずであった。


「崖崩れ、だと……」


森の入り口にある監視棟に入り、担当者の報告を聞いた途端、ミシュアルは声を荒げた。


「まさか、ふたりの乗った車が土砂に埋まったなどと戯《たわ》けたことは言うまいなっ!?」

「シーク・ミシュアル、頼むから落ち着いてくれ! ――それで、コテージと連絡は取れたのか?」

「……それが、電気系統に問題が発生したのか、ルートのセンサーが反応していません。コテージとも連絡が取れず……」


担当者の青褪めた表情と震える声に、ミシュアルは眩暈を覚えていた。

舞には携帯以外に、本人も知らぬ場所にGPSを潜ませてある。盗賊団に攫われた時も、その装置が役に立った。GPSのおかげで、早急に舞の居場所を特定することができたのだ。

しかし、今回ばかりは役に立ちそうにない。この狭い範囲では、居場所がコテージか土砂の中かまでは判別不能だ。

しかも、GPSには生体反応までチェックする機能はついていない。


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