紺碧の海 金色の砂漠
こんなことなら昨夜、「わかった、力になろう」と言えば良かったのだ。そうすれば、舞はミシュアルに一本連絡を入れたかも知れない。いくら正しいことをしたつもりになっていても、相手を納得させられぬなら意味がない。


ミシュアルは苛立ちを抑え切れず、スコールの中、外に飛び出した。



「何処に行くつもりだ!」


ふいに肩を掴まれる。思った通り、レイだった。


「決まっておろう。森に入るのだ。土砂の下に舞がいないことを私自身が確認する!」

「それは大丈夫だ」

「何をもってそう断言できる! あの担当者とやらも、わからぬと言っていたではないかっ!」
 

スーツが水を吸い、シャツはおろか下着まで染み込んでいた。

彼の体にも痛いほど感じる雨が、もし傷ついた舞の頭上にも降り注いでいるとしたら……。とても、ジッと待ってなどいられない。


「確かに連絡は取れていない。だが、コテージの電源が入ったことを確認している。これはふたりがコテージまで辿り着いたという証だ!」

「間違いないな! 気休めなら許さんぞ」

「気休めを言ってどうする!? 私のティナも一緒にいるんだ!」
 

同じくズブ濡れになりながら、レイも堪え切れず叫んだ。

ミシュアルはアズルブルーの瞳を睨みつけ、やがて、目を逸らした。


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