紺碧の海 金色の砂漠
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嵐の海で国王たちが一触即発の事態を招いているなど、この時の舞には想像もできない。

いや、それどころではなかったのである。


「ふぎゃーっ!」


舞は水圧によりコテージのほうに吹き飛ばされた。可愛らしく叫びたいところだが、とても叫び声を選んでいる余裕はない。


砂漠の上を逃げまくるのは大変だった。ジャンビーアを向けられ、殺されそうになったこともある。麻袋を被せられて荷物のように運ばれた時は、本当に売られるのかと思ったほどだ。

思えばここ数ヶ月、その前の二十年間とは比べ物にならないほど、貴重な経験を積んできた。

だが今回は……水に弾き飛ばされ、流されそうになったのだ。これもできればやりたくない“貴重な経験”の一つだろう。


(何でっ!? ハネムーンに来ただけなのにっ。何でこうなるのよっ!)


ミシュアル国王がいたら、『お前が勝手に動くからだ!』と怒鳴られるのは目に見えている。

それでも、舞はここに彼がいないことが、例えようもなく不安だった。


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