紺碧の海 金色の砂漠
真っ暗な海中に体が沈む。

マキシ丈のスカートが足に絡み、ティナの自由を奪った。こんなことならミニにしておけば良かった、と思っても後の祭りだ。


(私はこのまま死ぬのかしら?)


もう一度、レイに逢っておきたかった。

でも、ティナが死ねばレイは心置きなく再婚できる。ティナも、わざと悪女のふりをしなくても済む。これで皆が幸せになれるのなら……。


ティナが無駄な抵抗をやめ、覚悟を決めた時だった。

 
背後から抱き締められ、引っ張り上げられる。それは二年前、アズルブルーの海で味わったものと同じ感じがして――。


海面に顔を出した瞬間、同じ叱声が聞こえた。


「いい加減にしてくれないか、ティナ? 君はよほどポセイドンが恋しいようだが……もう、私の妻なんだぞ」


目の前にレイがいる。

神様がティナの願いを聞き届けて、二年前の幻を見させて下さったのだ。ティナはそう思った。


「ああ……神様、ありがとうございます。もう一度、レイに逢えて……私は思い残すことはありません」

「ティナ、ふざけている場合じゃない! アーイシャ殿はどこだ!?」


その言葉にティナはハッとした。


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