紺碧の海 金色の砂漠
小屋から吹き出した水は、ひょっとして舞をも押し流したのだろうか? ティナと同じように、この入り江に放り込まれたのだとしたら……。


「レイ……ああ、どうしましょう。マイは私の前に居たの。私は流されてしまって……マイがどうなったのかわからないわ」


ティナの言葉に、レイは目を伏せ低い声で呟いた。


「それは不味いな。君のブロンドは暗闇に光って見えた。だが、アーイシャ殿の髪だと……」


夜の海で黒髪など見つけられるはずがない。それに、ティナはオフホワイトの明るい色のワンピースを着ているが、舞が着ていたのは彩度の低い色合いが多く使われたエスニック柄。

ティナはそのこともレイに伝えた。


「どちらにしても、君をコテージに連れて行ってからだ」


そう言うと岸まで上がり、レイはティナを抱き上げようとする。


「私はいいの。お願い、マイを探して下さい。私はもう一度小屋の辺りを」

「いいから、黙って言うとおりにするんだっ!」


それは聞き慣れないレイの怒声であった。

ティナは彼に抱き上げられ、緊張した面持ちでレイの顔を注視する。


「一国の王妃の身に何かあれば、ただでは済まないんだ。たとえ事故であれ、クアルン王妃が我が国で命を落とすようなことにでもなれば……」


レイの声は深刻極まりないものであった。


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