紺碧の海 金色の砂漠
彼の懸念する事態になれば、アズウォルドのような小国にとって国際的イメージの低下は免れない。テロにより国王を殺された事件が掘り起こされ、再び危険な国と呼ばれるだろう。

それに、あのミシュアル国王が許すはずがない。

無理矢理ではないにせよ、舞を入り江のコテージまで連れて来たのはティナだ。事故が異常気象により長時間降り続くスコールのせい、なんて言い訳も甚だしい。
 

「ごめんなさい。謝って済むことじゃないけれど……マイに何かあった時は、私が責任を取ります」

「責任? 何をどうするつもりだ?」

「わからないけど……私がマイを連れ出したのだから。私も死んだら、きっとシーク・ミシュアルだってお許しに」

「馬鹿を言うな! そんなこと……万にひとつ、クアルンと戦争になったとしても、私は君を差し出すつもりはない」


レイの言葉にティナは目を見開いた。

まさか、国王としての立場が第一の彼の口から、そんな台詞を聞くとは思ってもいなかったからだ。

ティナは、それどころではない、と思いながらも、つい気になって尋ねてしまう。


「で、でも……私がいなくなれば、あなたは再婚できるのよ。私みたいな役立たずの女のために、この国を窮地に陥れるような真似だけはできないわ!」


すると、レイはコテージの前でティナを下ろし、濡れた髪をかき上げた。


「――この国も国民も、私は全力で守るつもりだ。だがティナ、君は違う。君だけは、私の命を盾にしても守る覚悟でいる。誓って言うが、ローラの子供の父親は私じゃない。君を裏切ったと思われるのは心外だ」


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