紺碧の海 金色の砂漠
「でも……でも、彼女は二月の終わりにアズウォルドに来ていたわ」

「二月の終わりに我が国にいて、妊娠五ヶ月の女性が何人いると思うんだ?」

「ふたりで、会っていたって、タブロイド紙に……」


ティナの声がだんだん小さくなる。


「映画の撮影現場を視察して、挨拶をしただけだ。それに、私が会うだけで女性を妊娠させられるような男じゃないのは、君が一番知っているはずだが」


レイの返事にティナは再び声を上げた。


「そ、そうよ! わかっているもの。あなたがもう、私に興味がないってことは……だから」

「そうじゃない!」


レイは一旦言葉を切ると、ティナの頬に手を添えた。


「アーイシャ殿の捜索に私も加わる。君はコテージから一歩も出るんじゃない。説明はその後だ。……いいね」


軽く口づけられ、ティナもうなずくよりほかない。


「マイを助けて……お願いだから。マイが無事なら、私」


「えーっと? わたしがどうかした?」


突然、コテージの中から声が聞こえ……そこに立っていたのは、クアルン王国アーイシャ妃、もとい、舞であった。


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