紺碧の海 金色の砂漠
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「まったく。他国で面倒を起こすなと言ったであろう。舞、少しは反省しているのか?」

「……」


約二時間後、嘘のようにスコールが止んだ星空の下、舞はミシュアル国王とヘリに乗っていた。

コテージに避難していた時は他の兵士やレイ国王たちが居た為、ひたすら舞を隠すようにしていたが……。ふたりに一旦別れを告げ、ヘリで入り江を離れた途端、ミシュアル国王は小言を言い始めた。


舞が崖崩れのことを聞いたのはコテージに避難していた時だ。

携帯も固定電話も繋がらず、崖崩れでたったひとつの道路は通行できず、地盤の状態が悪くて森の中に入ることもできなかったという。追いかけて来なかったのではなく、来れなかったと知り、舞は心の中でホッと息を吐く。

スコールのせいで軍用ヘリすら飛ばせず、レイ国王は海軍の巡洋艦と潜水チームを呼び寄せた。ふたりの王妃の安否確認の為、入り江と外海を繋ぐ狭い回廊を通り抜け、上陸作戦に出たのだった。

その作戦に周囲の制止も振り切り、ミシュアル国王が同行してくれたとなれば、本来なら感激ものだろう。


「舞、聞いておるのか? 返事をいたせっ!」


苛立たしげなその声に、舞は背中を向けた。


(何よ……どうせアルにとって一番は国王としての名誉で、わたしはオマケなんじゃない!)


レイ国王はティナを抱き締めていた。

浮気騒動は? 離婚の件はどうなったの? とわざわざ聞くのは野暮と言うものだ。ふたりは朝までコテージに残り、その後、本島に戻ると言っていた。


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