紺碧の海 金色の砂漠
ティナは舞を見送りながら、


「クアルンと戦争になっても私を守るって言ってくれたの。だから……私、レイのことを信じるわ。何があっても、もし子供が授からなくても、愛は変わらないって」
 

ピンチに颯爽と現れて、女が一番聞きたい言葉をくれる。ティナが全部、水――今回の場合、海に流しても当然だと思う。

だがミシュアル国王に言わせれば……。


「あのレイが、国際的にダメージを受けるような問題を起こすはずがなかろう。全く、女というものは、なんと短絡的な……」


そりゃそうだろう。舞にだってそれくらいのことはわかる。重要なのは、そう言って欲しいのであって、本当に戦争を起こして欲しい訳じゃない。


(なんでアルには、そういう女心がわかんないのよっ!)


舞が黙り込んでいると、ミシュアル国王はブツブツ言い始めた。


「それほどまでに、レイに遅れを取ったことを怒っているのか? 昨夜ほどの激しい雨に打たれたのは、人生で初めての経験だ。それに、海で泳いだことも数回しかない。他国の軍を勝手に動かすことなどできぬし……」


その言葉を聞き、舞は振り返るなりミシュアル国王に抱きついた。ちょっとだけヘリが揺れてビックリしたが……操縦士からクレームは出なかった。


「最初に名前を呼んで欲しかったのっ! 無事でよかった……死ぬほど心配したって、嘘でもいいから言って欲しかった。ただ、それだけ」

「馬鹿者! 心配どころで済むわけがなかろう。舞、今後はせめて、私の手が届く範囲で窮地に陥るようにしてくれぬか?」


はい、と答えるのも間違っている気がして……舞は小さくうなずき、キスで応えたのだった。
 

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