紺碧の海 金色の砂漠
「ごめんなさい……本当に、ごめんなさい。でも今は信じてるわ……あなたのこと。もう、遅いかも知れないけれど、私はあなたの妻でいたい……」


手で口元を覆い、ティナはしゃくりを上げながら気持ちを伝えた。


「愛してるの……二年前と変わらず、ううん、それ以上に。相応しい妻でいたかっただけなの。みんなに、そう思って欲しかった……それだけだったのよ。あなたが子供は要らないと言うなら、私も要らない。もっと、魅力的な……あなたが好む女性になるから……お願い、レイ」


直後、ティナはレイの胸に抱き締められていた。


「マイ・エンジェル――それ以上魅力的になっても、私の愛はこれが精一杯だ」


レイは柔らかい笑顔で彼女の顔を覗き込み、甘い声で囁いた。


「そ、そんな……だって……」


二ヶ月も妻として愛して貰えないのに。ティナはその言葉を飲み込む。

すると、レイは彼女の隣に座って優しく肩を抱き寄せ、信じられない言葉を口にしたのだ。


「ティナ……君の“妊娠しなければならない”という、同じプレッシャーを私も感じていた。素直に血の繋がった家族が欲しいという気持ちと、君に子供を与えてやりたいという願い。努力が結果に直結しないのは初めての経験でね。どうすればいいのかわからなくなり……」


“抱かなかった”のではなく“抱けなかった”彼は悲しそうに告白する。


「どうして? どうして言ってくれなかったの?」


話してくれていたら、こんなに悩むことはなかったのに、とティナは思う。


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